大野一雄は1906年10月27日、函館の弁天町に生まれた。生家は北洋を漁場にする網元で、父はロシア語を話し、冬はカムチャッカまで漁に出た。母は西洋料理を得意とし、琴は六段の名手、オルガンも弾いた。母の弾くオルガンで兄弟たちは「庭の千草」を歌ったという。中学に入り、まもなく一雄は母...